突然、笑顔と共に渡された薬箱が1つ
それを渡されたのはどこまでも無愛想な君主
任された患者はどこまでも意地っ張りの我侭覇王
さてはて……
・ヒーリング・
SR曹操×R曹操
さっきから曹操はむすっとした表情で、目の前の存在を見下ろしている。 それに気付いてるだろうに、その人物は表情ひとつ変えず、黙々と曹操の手に 器用に包帯を巻いていく。 それが気に食わないといえばそうだが、何もリアクションが無いというのは些か困る。 「……」 「いつまでそんな顔をしてるつもりだ?」 包帯を巻き終えた孟徳が、いい加減にしろとばかりにようやく言葉を発した。 「そっちの手も出せ。傷が酷い」 手を差し延べられては嫌とも言えず、曹操は反対の手を差し出した。 その手にも孟徳は、先程と同じ手当てを施していく。 「………何も言わぬのか?」 「何をだ?」 「…いや、いい…」 曹操の手には、数箇所に火傷の跡があった。 そんなに重いものではないにしろ、見た目に痛々しい。 多分、火計によるものだろう。 曹操の他の輩も、火傷やら矢傷が目立っていた気がする。 「我ともあろうものが…こんな醜態を晒す事になるとは」 「俺はそうは思わんな」 「何?」 手当てを終えた孟徳は、薬箱に包帯を戻す。 代わりに、ぬるま湯を張った桶の中にあった布を絞った。 「勝つ時があれば負ける時もある。それが当たり前だろう」 「………」 絞った布で孟徳は、曹操の顔についた血と汚れを拭ってやる。 両手が使えない曹操はされるがままだ。 それが情けなくて遣り切れない。 「……お前には見せたくない姿だ」 「ほぅ…?俺が馬鹿にするとでも思ったのか?」 にやりと孟徳が意地悪く笑む―――完全に今日は立場が逆転してしまった。 それが面白くなく、曹操はふんと顔を背けた。 「したければすればいい。どうせ…―――っつ」 ふわり、と指先に触れた温もり。 包帯が巻かれていない指先に、孟徳が口付けたのだ。 口元に引き寄せ、労わる様に包帯が巻かれた手の甲にも口付けを落とす。 その様子に曹操は目が離せず、不覚にも見惚れてしまった。 「この程度で済んだんだ。良かったと思え」 「む…ならばお前はそう思っているのか?」 意外な切り返しに、孟徳は少し驚いた顔をした。 「どうなんだ?孟徳」 してやったり、とばかりに掴まれていた手で逆に孟徳の手を掴むと引き寄せる。 間近に迫る互いの顔。 言い逃れはさせんとばかりに、曹操は孟徳を見据えた。 「……何が言いたい?」 「それはこちらが聞いている」 「………」 むぅ、と孟徳が眉を顰める。 元々の性格上なのか、それを本人の前で口にするのは難しい。 「孟徳」 「………」 黙り込んでしまった孟徳に、曹操はふっと笑うと、腕を引いて胸に抱き寄せた。 「もういい。そんなに悩ませるつもりではなかったのだ」 言いつつも、曹操がくっくっと笑いを堪えているのが分かる。 それが面白くなくて、孟徳は腕の中で身じろいだ。 「そんな余裕があるなら後は自分でやれ」 どうやら完全に機嫌を損ねてしまったらしい。 腕から逃れようとしているようだが、そう易々と離してやるつもりはない。 「そう機嫌を損ねるな。本当に悪気は無かったのだ」 「ふん、言い訳など要らん」 「それは困ったな」 困ったと言う割には、嬉しそうな曹操に孟徳は更に苛立つ。 「いい加減、離せ」 「断る」 「何故だ」 「お前を離す理由が無い」 「………」 ここまではっきり言われてしまうと、返す言葉が無くなるわけで… 「俺は離れたい!だから離せ!」 「何故だ?」 「……っ」 ああ、本当にどうしようもない。 言葉に詰まった孟徳の完敗である。 勝者となった曹操は、得意げに笑うと孟徳を抱き直す。 余計に密着する体温と、静かな部屋だから伝わる心音。 それを感じていると、良かったと思う自分がそこに居るのに気付き、孟徳はふんと笑った。 「今度は何だ?」 「別に」 「気になるではないか」 「気にするな」 「む……」 延々と繰り返された不毛な会話もここで終った。 孟徳を抱き締める曹操の腕が僅かに緩んで、耳元にすうっと安らかな呼吸音。 「……器用なヤツだ」 戦の後の静けさ。 呆れたような孟徳の言葉と、知らずに寝入る曹操の寝息だけが其処にあった。 了 |
バカップル再び。
何のかんので面倒見のイイR曹操希望。
そしSR曹操様は我侭プーです。
きっと手が使えないとか言って餌付けされればいい
ちなみに郭嘉はそんな事はお見通しだ!
さすが千里眼!ヤッタネ!(何がヨ)
ブラウザバックでお戻りください。
写真素材→ キワモノ