ずっとふたりで…



 大木に傷付いた体を預けてようやく終りの時を迎えたのだと実感する。

 長かったとか、短かったとか、そんな事はどうでも良かった。

 悔いや未練は感じない。……ただ、最後に抱いた温もりだけがひどく懐かしかしく思う。
 











 自分で奪った。
 
 戦国の倣いを言い訳に斬り捨てた。
 
 










 恨んでいるだろうな。

 憎まれているに違いない。

 こんな今を迎えた自分を嘲われても構わない。








 だけど






 これだけは信じて欲しいと思う。

 







 あの時告げた言葉に

 今でも消えない想いに


 何一つ偽りはないのだと。









 「………」














 口から紡がれた言葉は声にならず、消えかけた呼吸に溶けた。






















 視界が霞む。

 降り頻る雨のせいだろうか。


















 ああ、心残は有ったな。




 結局、答えて貰えなかった事か
















 冷えきって動かなくなった指先。

 あの時に繋いだ手も、今は雨の冷たさも何も感じない。
















 地を打つ雨音に混じって、地面を歩く音がする。――――敵の追っ手か。
 




 抵抗する力も気も、もう既に無い。

 この首が欲しいなら斬り落として手柄にすれば良いと目を閉じた。












 だが、その気配は目の前で歩みを止めるとじっと幸村を伺っている様だった。
























『無様だな、真田の』

















 聞き覚えのある声。聞けるはずが無い声に目を開ける。

 霞んだ視界に映ったのはぼんやりした影のようなものだったが、自然と笑みが溢れた。


 

















『何を笑っておる…今際の際で気でも違ったか?』




















 相変わらずの不遜で、生意気な声。
 
 だけど、一番聞きたかった声。
 























 気でも違った……ああ、そうかもしれないな。

 でも其方の声が聞えるなら、それも悪くない。




















 気配が隣に移動した。

 腰を降ろしたのだろうか、気配が更に近付いた。








 













 ふわり





















 不意に手に温もりが触れた。

 見えなくても分かる。冷たい自分の手を包むように握る両手の熱。


























『もう、いいのか?』



















 さっきとは打って変わった、どこか戸惑いを含んだ声。
 
 言いたい事は分かってるから、頷いた。
















 ――――――ああ、私は武士として、私の望むままに生きた。
















 その答えに笑ったのだろうか。
 
 握られていた手が温もりを無くし、代わりに頭を抱き締めるられたのか頬に暖かさが伝わる。

















『ならば……もう休んでいいぞ』
















 何処か笑みを含んだ声にもう一度頷く。













 声にならなくて、心の中で問い掛けを呟いた。

 あの時聞けなかった答えを聞かせて欲しいと思ったから。


 


 
















 だが、それが聞こえたのか


























『馬鹿め……――――――言われずとも、ずっとお前の傍にいてやるわ』






 











 その言葉にふっと笑って頷くと、再び抱き締めてくれる愛しい存在に身を預けた。



























離した手が再び繋がれた今、誓おう


今度こそ

ずっと二人で……









またまた死にネタです。
大阪夏の陣の終わりですね
幸村のED上下ルートを見た時から書こうと決めていたので
私はいつもこういう芸風です(嫌)





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