北門からの突然の敵襲に本陣は混乱した。 中央で戦っていた幸村の耳にもその情報は伝えられる。 「北が苦戦を強いられております!どうか援軍を!」 「承知した!」 愛馬に跨ると腹を蹴った。 北を狙うとは…なかなかの兵だと幸村は不謹慎だと知りつつも、内心 まだ見ぬ敵にほくそ笑む。 途中で遮る徳川の兵を蹴散らしながら幸村は進む。 ふと、その中にまばらに混じる徳川とは違う家紋に気付いた。 ……見覚えがある。 「あの紋は……」 記憶を手繰る間に目の前には奮戦し、蹴散らされる豊臣の兵が目に入った。 「真田幸村!推参!」 愛槍、紅交龍牙を振り翳して幸村は競合いの中へ突っ込む。 槍を一振りする度に血飛沫と断末魔の悲鳴が上がった。 「寄らば斬る!」 また一閃。首が、腕が、血が飛び散る。 その兵士が掲げる旗。 数多の兵の掲げる徳川の藍色とは違う。 深緑に…………竹に雀…? ふっと、頭上が翳った。 「幸村様!」 気付いたくのいちの声に幸村は反射的に紅交龍牙を翳す。 ガキィンと得物同士がぶつかり合う音。 腕にじわり、と響く衝撃。 通り過ぎる大きな馬影。 血を浴びたような赤毛を持つ馬が幸村の後ろに着地する。 数多の戦場を駆けた幸村が知る中でその馬は一頭しか居ない。 心臓がけたたましく鳴る。 何が有ったのか分からない。 ――――そんなはずは無い 「北の守りが薄いという情報は誠だった――――が、案外早い行動だったな」 馬上の人物が幸村を見て笑みを浮かべた。 竹に雀の鎧。三日月をあしらった兜 隻眼が幸村に向けられる。 真っ直ぐに幸村に向けられる視線。 透き通った琥珀の瞳。不敵な笑みを刻んだ口元。 ――――何故。 言葉が耳に届かない。いや、声にならなかった。 「どうした?わしがここに来たのが意外と言った表情(カオ)だな」 黙ったままの幸村に政宗はふんと笑う。 「何故……其方が此処にいる?」 漸く、搾り出すように問い掛けられた言葉に、政宗は再笑う。 「何故?…そんなの聞くまでもなかろう?――――真田幸村!」 政宗が跨った汗血馬の腹を蹴り、正面の幸村へ向かった。 再び得物がぶつかる。 幸村は再びそれを受け止めた。 ギリギリと擦れ、武器を挟んで互いの顔が間近にある。
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このお話は…
拍手にあった話 ⇒ この話 ⇒ 『咲いて散りゆく花の名は…』
の順で続いてました;;;;;
いや;中途半端に今更晒して本当にすみまs…;;
某所で既に晒しては来たんですががが;;;
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