運命はどうしてこうも上手くいかぬものなのだろうか
それが我らに決められたことなのならば仕方あるまい

遠くで残党の声がする―――――先ほどよりも近い。

……疲弊した我らが追っ手から逃げ切るのは難しいだろう。


「―――このままでは奴らに追いつかれるのも時間の問題だ――先に行け」
「何……!」
「少し時間稼ぎが必要だろう?それをわしが務めるだけだ」
「馬鹿な……!!貴方が残るならば私も!!」

「そこまで伊達軍は軟ではない――奴らを留めるくらい雑作もないことよ」
「しかし……!」
「幸村、お前まさか……わしが死ぬとでも思っているのか?」
「……ッ!」
言葉を無くす幸村に政宗は図星か、と苦笑した。
「困った奴だなお前は」
「………」

黙る幸村に、政宗は徐に己の眼帯を外すと、幸村に手渡した。
「これは……」
「戻るという約束の証にお前にやろう――――その代り」
政宗の手が幸村の額から六銭紋の書かれた鉢巻きを奪う。
「これはわしが預かろう」
そう言って政宗は笑った。

「政宗殿―――――」
「何だ」
「これはお預かりするだけです――お戻りになった際に私のそれと引き代えです」
「よかろう、ならば無くすなよ」
「政宗殿こそ」

再び笑う。
その直後に、再び残党の声―――――

「見つかる前に早く行け」
「はい――――あの!政宗殿……!」
「?」
「御武運を」
「お前もな」


幸村は何度か振り返っていたが、やがて前を見て走り出す。


その後ろ姿を見送って、政宗はほっと息をひとつ吐いた。




「ぼーんてん」
「何だ」
「これで……良かったの?」
「あぁ」

幸村達が見えなくなった先を見ながら、政宗は頷く。




一緒に行ったら良かったかもしれない。
隣であの時を取り戻せたかもしれない。




だが――――それは余りにも自分勝手だ。


「同じ場所で生きる」という願いは叶ったのだ。
だから、自分は今は亡くとは言え、遠呂智に代償を払わなくてはならない。






「―――すまんな、皆を巻き込んでしまって…」



「何を仰られますか!我ら伊達家臣の全ては政宗様の為に」
「そーそー余計な事は気にしなくていいんだよ!梵天!」
「若に来るなと言われても、何処まででもお供いたしますよ」

「小十郎…成実…綱元……」



遠くで再び、残党の声がする。
かなりの数だが、幸村達が離れるまでは何があっても時間を稼がなくては。



「さーって、お客さんも大勢来たようだし、頑張っちゃおうかな」
「無理すんなよ、おっさん!」
「油断するなよ、ガキ」
「2人とも…ちゃんと仲良くしてくださいよ」


そんな3人の遣り取りに政宗は笑うと、幸村の鉢巻を握り締めてもう一度だけ彼らの消えた方向を見る。




「政宗様」
「ああ、―――――全軍、かかれぇっ!!」


雪崩のように押し寄せる残党と、伊達軍の軍勢が距離を縮める。

幸村の鉢巻を手に巻きつけて、政宗は心の中で呟いた。






―――――幸村……

―――――お前に出会えて……本当に良かった―――



一時期、隠しで公開していたものの再うpです。
OROCHIをプレイして勢いで書いた記憶があります;;
無駄な背後設定が大量にあるんですが…そこは割愛で;;;

本当に自分、政宗の死フラグ率が高いですね!!

そろそろラブラブな2人も書いてみよう…そうしよう…orz


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